近年、注文住宅を検討するなかで「エレベーターを設置すべきかどうか」を考える人が増えています。
以前は、エレベーターといえば高齢者のいる家庭や高級住宅に限られた設備というイメージがありましたが、バリアフリーや将来の暮らしやすさを重視する方のあいだで、戸建て用ホームエレベーターの需要が高まっています。
とくに2階のリビングや3階建ての住宅では、日々の昇り降りが意外と負担になるケースもあり、導入を検討する価値は十分にあるでしょう。
とはいえ、設置にはある程度の費用がかかり、間取りや構造にも影響を及ぼします。また、ライフスタイルによっては「今は必要ない」と感じる方もいるかもしれません。
この記事では、注文住宅にエレベーターを導入するメリット・デメリット、費用や設計上のポイント、導入時の注意点などを解説します。これから家づくりを始める方は、ぜひ参考としてください。
目次
注文住宅にエレベーターは本当に必要?
注文住宅には、エレベーターを設置した方がよいケースとしなくてもよいケースがあります。ホームエレベーターの設置を検討する際に考慮したいポイントについて、解説します。
ホームエレベーターの設置がおすすめのケース
ホームエレベーターの設置がとくにおすすめなのは、将来を見据えたバリアフリー住宅を希望している方や、高齢者・身体に不自由のある家族がいる家庭です。
今は健康でも、加齢により階段の昇り降りが負担になる可能性は誰にでもあり、将来の暮らしを見越した備えとして大変便利です。2階リビングや3階建ての住宅では日常的に階段の昇り降りが必要になり、荷物の運搬や育児中の負担も大きくなるでしょう。
ホームエレベーターがあれば、生活動線が快適になり、家全体の利便性も向上します。さらに、将来的な親との同居や介護を想定している場合にも、早い段階で導入すれば安心感が増します。
日々の快適さと長期的な安心の両方を求める方には、とくにおすすめの設備です。
ホームエレベーターを設置すべきか判断する3つのポイント
ホームエレベーターの設置を検討する際には、次の3つのポイントを軸に判断するとよいでしょう。
1,家族構成と将来設計:
現在の家族だけでなく、将来的に高齢者との同居や介護の可能性があるかどうかを考えましょう。年齢を重ねても快適に暮らすための備えとして、有効です。
2,建物の構造や階数:
2階リビングや3階建ての住宅は、エレベーターがあることで生活動線が大きく改善します。階段中心の生活が身体的に負担になる構造であれば、設置を前向きに考えるべきでしょう。
3,予算とスペース:
本体価格や工事費、維持費などのコストに見合う価値を感じられるかどうかも重要です。限られたスペースの中で動線やデザインとの調和が取れるかも確認しましょう。これらを総合的に判断することで、設置するか否かを検討できます。
ホームエレベーター以外の選択肢
ホームエレベーターは便利ですが、費用やスペースの問題から導入が難しいケースもあります。
その場合、ほかのバリアフリー対策や昇降サポート機器の導入を検討するのもひとつの方法です。たとえば、階段昇降機(階段リフト)は、後付けが可能で比較的安価に設置でき、高齢者や足腰に不安のある人にとって有効な代替手段です。
また住宅の間取りを工夫して、生活空間を1階に集約する「平屋風2階建て」などもおすすめです。
エレベーターだけにこだわらず、自分たちのライフスタイルに合った方法を検討しましょう。
エレベーターの種類と特徴
ホームエレベーターには、大きくわけて油圧式とロープ式があります。それぞれ動作する仕組みやコスト、メリットとデメリットが異なるため、自身の金銭事情やライフスタイルに合わせて選択しましょう。
油圧式
油圧式は、油の圧力を利用してシリンダーを上下させることでエレベーターを動かす仕組みです。主に2〜3階建ての住宅向けで、動作が比較的静かで滑らかです。機械室が必要なタイプと不要なタイプがあり、設置場所の自由度は機種により異なります。
【メリット】
・動作音が静かで振動も少なく、住宅内に適した快適な乗り心地
・昇降速度がゆっくりのため高齢者にも安心
・比較的低層向けで安定性が高く、住宅規模に合いやすい
【デメリット】
・油圧ポンプのためのスペースやメンテナンスが必要
・作動油の定期的な交換や点検が必要で、維持費がやや高め
・長期間使用すると油漏れのリスクがある
ロープ式
ロープ式は、巻き上げ機によってワイヤーロープを巻き取ることでエレベーターを上下させる方式です。高層ビルなどにも使われる技術を住宅用に小型化したもので、2階建て〜4階建て程度の住宅に適しています。
【メリット】
・昇降スピードが比較的速く、ストレスの少ない移動が可能
・油を使用しないため、油漏れやにおいの心配がない
・コンパクト設計のモデルもあり、省スペースでも設置可能
【デメリット】
・動作音や振動がやや大きめの機種もあり、静音性は油圧式に劣ることがある
・巻き上げ機やワイヤーのメンテナンスが必要で、ランニングコストが発生する
・設置条件によっては構造補強が必要な場合がある
エレベーターの設置前に知っておきたい注意点
注文住宅にエレベーターを設置する際、自身のライフスタイルにあっているかどうか考慮するほか、いくつかおさえておきたい注意点があります。エレベーターは導入費用やランニングコストがかかるため、後悔しないように、慎重に検討しましょう。
エレベーター設置に必要な間取りを知る
ホームエレベーターの設置には、一定のスペースが必要です。一般的に1畳程度の床面積と天井高2.4m以上が必要とされており、加えて機械室や昇降路、出入口のスペースも考慮します。
間取りの初期段階から設計に組み込むことで、無駄なスペースを生まず、効率的に配置できるでしょう。2〜3階をつなぐ設計では、縦のラインを意識し、上下階でエレベーターの位置がそろうようにします。
また、生活動線上に配置することで、家事や移動の効率も格段に向上します。
実績が豊富な施工会社・設計士へ依頼する
エレベーターを安全かつ快適に設置するには、注文住宅へ設置した実績が多い施工会社や、設計士への依頼が重要です。
建物の構造補強、電源や配線の準備、スペースの確保など、通常の住宅設計以上に多くの専門的配慮が必要になります。設計段階でエレベーターの仕様や設置位置をしっかり共有することで、後のトラブルや追加工事を防げるでしょう。
また、信頼できるメーカーや施工実績のある業者と提携しているかも重要です。エレベーターの導入は、単なる設備追加ではなく「住宅の一部」として機能させる必要があるため、設計段階からプロとの連携が欠かせません。
音・振動・停電時の対策をとる
エレベーター設置後、意外と気になるのが動作音や振動です。
特に寝室やリビングの近くに設置する場合は、防音材の活用や静音設計の機種を選ぶことで快適性を保てます。また、停電時にはエレベーターが動かなくなるため、バッテリーによる自動着床機能がある機種を選ぶと安心です。これにより停電中でも安全に地上階に降りられます。
さらに、日常的な点検や運転テストも大切で、音や動作に異常があれば早めに対応しましょう。建物全体の設計とエレベーターの機能性を両立させる工夫が、長く快適に使うためのコツです。
維持管理・故障時の対応をとる
ホームエレベーターは設置して終わりではなく、定期的なメンテナンスが欠かせません。
メーカーや施工会社が提供する保守契約に加入することで、定期点検や部品交換、万一の故障時の迅速な対応が可能です。点検は年1〜2回が一般的で、費用は年間で3万円〜10万円程度が目安です。
故障時にはメーカーのサポート体制が重要になるため、24時間対応や地元にサービス拠点があるかも確認しておきましょう。特に高齢者や身体に不自由のある方が利用する場合、迅速な復旧体制が整っていることが安全・安心につながります。
将来のリフォームや撤去の可能性を考慮する
ライフスタイルの変化によって、将来的にエレベーターの使用頻度が減ったり、住宅をリフォームする必要が生じたりすることがあります。エレベーター設置部分を汎用スペースとして転用しやすい構造にしておくと柔軟性が高まるでしょう。
たとえば、将来使わなくなった場合に収納やクローゼットとして活用できる設計もあります。逆に撤去を前提とする場合は、解体・修復費用や建物構造への影響も考慮しておくべきでしょう。
初期設計段階で「長く使う」「将来において撤去することも視野に入れる」などの方向性を施工会社と共有しておくと、無理のないリフォーム計画が立てやすくなります。
エレベーターの導入費用とランニングコストの相場
注文住宅にホームエレベーターを設置する場合、導入費用の相場は約150万〜300万円程度が一般的です。ただし導入費用は、機種の種類(油圧式・ロープ式など)、階数(2階建てか3階建てか)、機能(自動ドア・自動着床装置など)によって大きく変動します。
たとえば、シンプルな2階建て用の標準モデルなら150万〜200万円前後、3階建てや高機能モデルになると300万円を超えることもあります。さらに、設置に伴う建築工事費(基礎補強・電気工事など)も加わるため、総額で400万〜500万円程度になるケースもあるでしょう。
一方、ランニングコストとしては、年間3万〜10万円程度の保守点検費が目安です。
法令上、家庭用エレベーターには義務はないものの、安全性維持のためにメーカーや保守会社による定期点検を受けるのが一般的です。また、電気代も1ヶ月あたり数百円〜1,000円程度と比較的抑えられます。ただし、古くなれば部品交換や修理費用がかかるため、長期的な維持費も見込んで計画を立てることが重要です。
初期費用だけでなく、将来的なコストも含めて判断しましょう。
まとめ
注文住宅にエレベーターを設置するかどうかは、家族構成やライフスタイル、将来の暮らし方を見据えて判断することが大切です。
高齢者との同居や3階建て住宅、2階リビングなどのケースでは、生活動線の快適性や安全性を高める設備として大きなメリットがあります。一方で、設置には費用やスペースの確保、メンテナンスなどの負担が伴います。必要性や導入後の活用度をよく見極め、信頼できる施工会社や設計士と連携して進めましょう。
大阪府羽曳野市の「森下技建」では、ホームエレベーターの設置を含めた、さまざまな実績のある工務店・不動産です。注文住宅の施工をはじめ、リフォームや店舗のリニューアルも手がけてきましたので、お気軽にご相談ください。